FM KITAQ 78.5 「KITAQ企画会議」

毎週金曜日21:00~ FM KITAQにて放送中の「KITAQ企画会議」公式ブログです。

(今週のキーワード】「学習性無気力」

○ざっくりいうと・・・
過去の経験の積み重ねによって、“やっても無駄だ”とあきらめてしまい、自分で考えて行動することをあきらめてしまった状態。
言われた通りにこなすことが最善だ、と思い込んでいる状態。

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○ちょっと詳しく・・・

私たちは日々、体験の中からたくさんのことを学びます。

それは学校や研修のようなプログラムであったり、実践による体験だったりします。

ただ、この体験の仕方次第で、いくつか困ったことが起きます。
ひとつは、一つの考え方に縛られて、頑固になってしまうこと。
他のひとの意見を受け入れられず、自分の体験に基づいたやり方に固執してしまう状態がつくられてしまいます。
また、自分に体験に対して盲目的になりすぎ、依存してしまうことがあります。
自分がその場で最適に判断しているつもりでも、結局は自分の過去の体験に基づく判断基準に従っているにすぎないという状態にもなってしまいます。
そして、もうひとつが学習性無気力という状態。
これは、“結局自分は何をやってもだめ”というところに陥っちゃった状態です。

これはいずれも、“カタに押しはめられる”という体験を重ねることで起きています。
「こうあるべきだ」「これはやっちゃだめだ」という“○○すべべき”・“○○はいけない”という、非常にマニュアル的な、あたかもロボットをつくるようなプロセスによって生まれます。
言い方を変えれば、決められたやり方以外は認められない、という環境を体験すると起きるのです。

そして学習性無気力は、とくに難しい状況によって起きていきます。
やるべきことがそもそも非常に難しく、どんな行動をしても認められない、何度も同じことをやり直している、といった非常にストレスの高い環境で起きます。

例えば、会社で新しい商品をつくる、という仕事を任されたAさんがいるとします。
Aさんはいろんな企画を考え、上司に提案をしました。
しかし、上司はその提案をただ「ダメだ、やり直し」と、理由も言わずに突き返します。
Aさんは頑張って、また新しい企画をつくってもっていきます。
でも上司はまた同じ態度。
Aさんが理由を聞いても、上司は「そんなこともわからないのか、もっと勉強しろ」と怒ります。
Aさんは自分なりに勉強して、また企画を作り直します。
上司はやはり「よくわからないな、まだまだだな」と否定して、今度は事細かに指示を出してきます。
Aさんは言われたことを忠実に守って企画を直します。
“これで大丈夫”と思ってAさんが上司にもっていったら、「教えてやったのにこの程度か」とまたNG。
結局上司が「自分でやるから、もうやんなくていいよ」といって、上司が仕事を片付けてしまいました。

さて、こんなことが1回だけじゃなくて、何度も何か月も何年もこんな状態が続いたらどうなるでしょうか?
Aさんの立場だったら、「どうせやっても批判されるだけだし、結局上司が自分でやるし、適当にやっておくか」という心理状態、つまり学習性無気力になることは十分に考えられます。

そして残念なことに、これは特殊なケースではないのです。
状態の度合いに違いこそあれ、学習性無気力と言える状態に陥っているケースは少なくありません。
とくに会社などの組織には起こりやすく、いわゆる大企業病というものにもなっていきます。
また、活力がなくなっているまちでもよく起きている症状です。
場合によっては、うつ病も引き起こしてしまうこともあります。

ちなみにこの学習性無気力は、改善していくことが可能です。
それは自分自身の価値と可能性に気付き、信じて、行動すること。お互いに認め合い、支え合う関係性をつくること。
そして、“失敗しないこと”ではなく、“成功も失敗も関係なく、実践すること”を最も大事にしていれば、改善することは十分に可能です。
そのためには、やっぱり「まちはチームだ。」というコンセプトが支えになるのかもしれませんね。


文責:リサーチャー 渋谷